相田華子氏の『聞かせてよ、愛の言葉を』を
読みました。
心を病んだ人を抱える家族の実態がリアルに
描写されている作品。
とにかく、ぐいぐい引き込まれるように…、
あっという間に読んでしまいました。
すぐ、脳裏に浮かんだのは、2019年に起きた
農林水産省の元事務次官が自宅で44歳の長男
を殺害した事件でした。
元事務次官は、このままでは息子が誰かを殺
してしまうかもしれない、と懸念していたこ
とから、その前に、自分の手でその可能性を
絶たなければと思った…ということでした。
なんと凄惨で悲惨な事件でしょうか。
この本は、あの事件とも共通する問題を、私
たちに問うているような気がします。
【あらすじ】
作家の夫と離婚した冴子はノンフィクション
作家として、葉子と高志を女手一つで育てて
いた。
中学に入ってから高志は学校内でのいじめが
きっかけで不登校になり、次第に家庭内での
暴力や奇行が頻発していく。
ついに精神科にかかるようになるも、事態は
ひどくなるばかりだった。
処方される薬はどんどん増え、高志は数々の
事件を起こしていく。
家族が高志に振り回される様子が、姉である
葉子を通して語られていく。
母冴子を反面教師として、目立たぬことを信
条として平凡な専業主婦を夢みた葉子だった
が、結局は母と同じようにシングルマザーと
して生きていくことになる。
母と弟の高志の攻防に巻き込まれ続けた葉子
は、冴子亡きあと遺品整理をしながら、心を
病んだ子供の責任をどう取るべきなのか、生
き方を模索していく……。
【著者紹介】
1957年東京生まれ。
我が子がいじめによって不登校になったこと
をきっかけに、数々の支援団体や勉強会に関
わる。
ひきこもりや家庭内暴力の挙句の殺人事件な
どを、単に育て方の失敗や毒親のせいとして
片付けるのではなく、今一度社会全体で考え
ていきたいと、様々な活動に参加。
(つむぎ書房HPより)
著者の相田華子さんには、もう10年近く前に
なるでしょうか。お会いしたことがあります。
不登校、家庭内暴力、巻き込まれる家族の苦
悩…等々の実態をお聞きし、行政にはどのよ
うな支援が必要か、お話を伺いました。
そうです。
この本は、相田さんの体験に基づくものです。
実体験だと知りながら読み進めていたので、
その壮絶な日常の描写に、どうしたら良いの
だろ!!…と、ハラハラドキドキしながら、
当時のお話を思い出しながら、本に引き込ま
れていきました。
私の知人友人にも、同じようにお子さんのこ
とで悩まれている人が、実は結構います。
話を聞いて、行政でできる支援事業があれば
紹介していますが、とてもそれだけでは十分
ではないことを身に染みて感じているところ
でもあります。
衝撃の結末も含め、ぜひ、お一人でも多くの
方に読んでいただきたい一冊です。
政治家(市区町村)ランキング、全国 第3位 です。
田中優子Twitter → https://twitter.com/setagaya_tanaka